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2013年09月21日

京都迎賓館を見て思い出したこと。

京都迎賓館の内部に入って、空間が体に染み渡ってきた頃に沸いてきた感情は以外にも「懐かしいなぁ…」というものでした。




わたしが以前にいた設計事務所は、和風旅館をたくさんやっていました。
そこで経験させていただいた数々のお仕事が、この京都迎賓館を見ていて記憶の底の方から湧き上がって来たような感覚でした。




時代は、バブルの後半。巨大旅館ブームの頃です。
もちろん、こんなに工芸品的な建築ではありませんので一枚板なんかはありませんし、木材もほとんどが練り付けです。でも、材料のグレードの差こそあれ、腕の立つ造作大工さんを抱えた木工事屋さんと木の細かい納まりをたくさん考えてきましたし、京都迎賓館の部屋の構成は会議室を宴会場と言い換えると、なんとなく旅館的であると言えなくもない。工芸品による華やかさも旅館のそれに引けをとりません。そういう意味での冒頭の「懐かしいなぁ…」です。誤解を恐れずにいうと、大きな違いといえば、収益を上げる必要があるかないかによる空間的な余裕の差ぐらいだと思います。




テレビの特番でも取り上げられたりと、一時代を築いた巨大旅館ブームでしたが、その後のバブルの崩壊と個人主義時代の到来とともに、少人数部屋が求められるようになり、旅館のデザインがバリ風やエスニックスタイルのもっと素朴でコストのかからない無国籍なスタイルに変わって行きました。その一番顕著な例が、和室のつづきにベッドを置いた和洋室と呼ばれるスタイルです。それまでも和洋室という部屋はありましたが、この頃を境にこの和洋室が全くコンセプトの違った高級で個室感覚の強いタイプの部屋へと変わって行ったのです。長い時間をかけて徐々に築かれてきた旅館の現代和風もしくは数奇屋風といわれるスタイルは、ブームという爆発的な現象を契機に減少に転じました。それは、数奇屋風にきっちりと造り込まれた和室で非日常を味わうような旅行から、日常の延長のような気軽な感覚の旅行へと旅行自体のあり様も変わって行った転換期とリンクしているんだと思います。
こじつけかもしれませんが、この京都迎賓館の設計コンセプトのひとつに「現代和風」というキーワードがあります。それが、その減少していった旅館の「現代和風」とか「数奇屋風」といったスタイルに繋がっているように感じたのです。



今の建築業界の景気動向から考えると全く想像もできないはなしですが、たしかにそういう時代があって、迎賓館のような特別な建築ではなく、旅館というジャンルの中で普通にそういう建築が作られていました。今から考えると、やっぱりバブルの産物だったんだろうと思います。良かったのか悪かったのかはわかりませんが、そういう時代だったんだと思います。私はそういう仕事をしている事務所のなかでその一端をかじっただけですし、右も左もわからないうちにその真っ只中に入っていた訳ですが、当時の経験はいまではなかなかできないすごくいい経験だと思っています。



底の方から湧き上がってきた記憶は、忘れていた記憶というより、私が建築を勉強し始めた頃の根底にある記憶です。
この京都迎賓館を見学していると、図面を目の前に描いたり消したりを繰り返し、格闘していた頃にタイムスリップしたような気分になりました。
成長していないのか、描いたり消したりは今でもあまり変わっていませんけどね。




アーキスタジオ 哲 一級建築士事務所
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Posted by アーキスタジオ 哲 at 06:15Comments(0)京都の建築と雑記帳