2012年05月16日

校倉造って・・・

今回は正倉院も整備工事中で見れませんでしたが、法華堂近くに移築された校倉の経庫があるので、そっちを見ることにしました。子供たちは学校で習って印象深い大仏殿と校倉造には反応を示します。正倉院と同じ・・・とはいきませんが、こっちの校倉も小さいながらも迫力十分です。

校倉造って・・・
余談ですが、校倉の日影で一休みしているご夫婦がいい感じです。
それと、お決まりの思いっきり白とび。でも ↑ の写真は敢えて暗いところを狙った写真ではないから戴けない。建物の影が少し暗くなっても空は青く抜けて欲しかった。こういう写真になると家族旅行などでは使いづらいですね。なんかいつも曇り空みたいになっちゃう。比較するわけじゃないけど、ずっと前に使ってたオリンパスの古いコンデジは空の色が最高にきれいだった。
同じような写真ですが、 ↓ は一応軒裏にフォーカスロックしての写真なので我慢できますね。
校倉造って・・・
校倉造って・・・
校倉造って・・・法華堂経庫の説明です。

ところで校倉造って、湿気による木の膨張と収縮で木と木の隙間が調整されて、室内の湿度を一定に保って宝物の湿損を防いだ・・・って学校で習いませんでしたか?

この話、実際には重い屋根荷重を受ける校木の隙間があくことはほとんどないようですし、隙間が空いたとしても校木の収縮だけの隙間では十分な調湿は期待できないようで、結局のところ、校木の材料であるヒノキがもつ調湿力や宝物を入れていた辛棺(杉や桧の棺)が保管環境を比較的一定に保っていたこと、高床であったことが虫害を防いだこと・・・などが宝物を維持できた要因のようです。

そうなると、校木の三角形はなぜあの形になったんだろう…って思いませんか?
調湿機能を発揮しやすいための形だって習った気もするけど、単なるデザインなのかな?って。

これについては、以前たまたま図書館で借りて読んだ ↓ の本に(推論ですが)書いてあった記憶があったので、この度確認のため再び借りてきました。(読んだ記憶からこの本に断定するまで、相当必死で探しましたけどね。)

校倉造って・・・
杉のきた道―日本人の暮しを支えて (中公新書 419)
絶版本で内容の充実した本なので、いまでは高めの価格の古本しかないようです。

この本では、
丸太造(蒸籠造、校倉造も同じ)は古くから亜寒帯の針葉樹林域で作られてきたが、日本の校倉造のように三角形ものはない。これは、亜寒帯の針葉樹林域ではカラマツなどの直径20~30センチ級の中小経木が多いのに対して、日本では杉や桧の直径1メートル前後級の大径木が多く、森林状況から見て伐採した丸太をそのまま使っての丸太造りの技法が自然発生する事はあり得なかったとしています。温暖な日本では木が育ちすぎてしまうということです。丸太がそのまま使えないとなると木取りするのは当然の流れで、 ↓ の図のように大径材から6分割に三角形の材を木取りして使ったのだのだろう…と。

校倉造って・・・
      ↑ こんな風に半分の丸太に対して3本の校木を木取りしたらしい。

(でも、結果的には正倉院ではこの気取りによる木目であったのは半分強ぐらいだったらしいので、限定するには程遠い数字かもしれませんが。)

世界に例を見ない独特の面取三角形断面の校木は、湿度の調節あるいは水切りをよくするためともいわれていますが、それよりも入手しやすい直径の大材を用いたときの、割りやすく無駄の少ない木取法によって設定された断面形が規格化されたものだった…ということです。

日本人は登呂遺跡の時代から板材を切り出す(というか当時は割り出す…かな)技術は持っていたようですが、工具が発達していた訳ではなので、少しでも割る箇所が少なく同じ断面を得られ、無駄の少ない効率的な方法という事でこの木取りになったようです。

調湿機能を発揮しやすい形、というよりも説得力があるように思います。そして、決して彫りを深く見せたい…といったような意匠的な発想から生まれたものではないようです。

物の形には、説得力のある理由があるということ。深く肝に銘じたいと思います。


華厳宗大本山 東大寺 
所在地:奈良市雑司町406-1





大阪・吹田・千里ニュータウン/アーキスタジオ 哲 一級建築士事務所
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校倉造って・・・




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Posted by アーキスタジオ 哲 at 05:59│Comments(0)奈良の建築と雑記帳
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