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2012年11月07日

傾いてはいるけれど…

一見、いまにも崩れ落ちそうな雰囲気を醸し出している住宅。



一緒に歩いていたある人は、「危ないなぁ…」と独り言のようにつぶやいた。
その人は役所の建築課に勤めていた経歴があるので、私はその言葉を耳にして、役人的視点と言うのはそこなのか…と感じた。

私はと言えば、誤解を恐れずに言うと、大地震などの爆発的な外力が加わらない限りそんなに簡単に潰れるものではないのが建築だと思っているのでそこには眼が向かず、じわじわと伝わってくる建築の底力のようなものを感じ取っていた。ただ、確実に左に傾いてるように見えるのは気になるところだけど…。

1階の窓上のナナメ材は補強のためにあとから打ち付けられたもののように見える。2階のタイルは往年のモダンさが垣間見られるし、1階正面の門型は昔営んでいた商売の痕跡かもしれない。側面の土壁の保護のために貼られたトタンが錆び落ちた部分があるし、貫が腐っている部分もあったので、こんなことを言っては失礼だけど、見ようによっては人が住んでるのかどうかさえ疑わしい。

…が、それを完全に覆しているのは、窓下のラティスに掛けられたベゴニアのプランターとまだそれ程傷んでない簾、そして、ドアに貼られたポスター。これらの生活観がこの建物が今も現役であることを叙述に物語っている。

それにしても、この小さな住宅から発せられるじわじわとした迫力はなんなんだろうか。これが、時間の重みというものなのだろうか?

それだけではないかも知れないが、何も感じなければ通り過ぎてしまうような建物に目が止まり、そんなことを考えていること自体が、建物が何かを発信していることの表れなんだろうなぁ…と感じた次第。そう考えると、過去に目の前を通っているにもかかわらず気が付かなかった数々の有名な建築は、何も私に語りかけてくれなかったのかもしれない。それは、私の実力が足りないと判断した建築が敢えて語りかけてくれなかったのか、そもそもその有名な建築に語りかける力が無かったのかどっちなんだろうか?

この一軒の住宅からそんな大それたことを考えていた。




アーキスタジオ 哲 一級建築士事務所
~大阪・吹田・千里ニュータウンにある建築設計事務所です。
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Posted by アーキスタジオ 哲 at 06:15Comments(0)建築独り言